【書評】漫画「左ききのエレン」を読んだら仕事観が揺さぶられた

仕事 遊び


たま〜に、読むことが止められなくなる漫画に出会います。

「やめられない、とまらない」ってやつです。

ふいにそーゆー漫画を読んじゃうともう眠れないんですよね。ぶっ通しで読まないと気が済まなくなっちゃう。

で、考えてみたら自分の中でそんな漫画に共通してる部分があることに気づいたんです。

それがですね・・・

 

「陰」の色が濃い

 

ということ。

「陰」と「陽」で考えると圧倒的に「陰」に寄ってるんですよね。平たくいうと、どことなく「暗い」印象を持つ漫画でしょうか。

暗い漫画の魅力

例えばおやすみプンプンとか孤高の人 とか、初期のベルセルクなんかは、もうどうにも止まらなくなりました。血まなこで読んだ記憶があります。

考えてみたらどの漫画も全然ハッピーじゃないですよね。まーーーかなり暗い…。

どれも全体的にのしかかる重〜いテーマが強烈で、どっぷりとその世界に浸れるっていう効能があります。そして副作用で落ち込むという…。

 

ちなみに、ハッピーで笑える「陽」の漫画も好きなんですよ。むしろそっちのほうが読んだ数は多いと思います。

ただ、深く突き刺さった漫画って観点で思い返してみると「陰」が垣間見える作品ばっか。漫画家さんでも「陰」と「陽」どっちも書くぜー!みたいな人が好きだったりします。

井上雄彦さんだったら「スラムダンク」は当時オシッコちびるくらい好きでしたが、仄暗い人間の闇を描いたバガボンドリアル は何度も何度も読み返してしまう魅力があります。

古谷実さんだったら「稲中卓球部」は中学時代のバイブルだったけど、ヒミズ」「シガテラ」「ヒメアノ~ルあたりの重苦しくてサスペンス色の強い演出にはドーパミンがドバドバ放出される感覚があります。あれはホント凄い。

最近の暗い系ナンバーワン

で、そんな重苦しいテーマを兼ね備えた「陰」の色が濃い漫画に出会ったんです。最近だと暗い系で一番好きですね。完全に「どハマり」してます。

その漫画が「左ききのエレン」

これがヤバイんですよ・・・。

 

作者はかっぴーさん。

かつて「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」や「SNSポリスのSNS入門」っていう作品でかなり笑わせてもらったセンス抜群の漫画家さんです。

これらの作品は間違いなく「陽」なんですが「左ききのエレン」は超ド級の「陰」

読後感はまずまず落ち込みます。そしてヒジョーに考えさせられるんですよね。

  • 「夢」
  • 「仕事」
  • 「挫折」

この辺がメインテーマ。

20代から30代くらいに抱える「夢と現実の狭間で生まれる葛藤」をひたすらリアルに描いてるんですけど、もうグサグサ刺されまくって呆然となります。

凡人は天才になれない・・という事実

何かになりたい

って言う主人公のセリフが印象的なんですけど、彼は天才肌じゃないんです。器用貧乏みたいな平均的な青年。

でも何かになりたい!という漠然とした夢があってそれに向かって奮闘してるんですね。

ただ、周りには「非凡」な天才がいたと・・。

天才を見て夢が瓦解した人間はどーやって生きるのか?・・・この苦しみをトコトン細かく描いてます。

 

こーゆー視点の物語って読んだことがなかったのでホント新鮮でした。

さらに、天才たちが抱える悩みにもスポットを当てて、天才たらしめる努力と紆余曲折のストーリーも非常に面白い。

なんだか「全部盛り」みたいな漫画です。

「仕事」にフィーチャーした漫画ってかなり好きなんですけど、ここまで陰鬱な雰囲気を醸し出した作品は珍しいと思います。

「左ききのエレン」は何故面白いのか?

さらに、読んでて鳥肌が立つようなありとあらゆる魅力が詰まってます。 

① 絵のチカラ

良く言えば斬新な絵

悪く言っちゃうと「え?ヘタウマ?」みたいな力の抜けた絵が特徴です。

でもね、これが後々効いてくるんですよ・・・。あの絵だから面白いって部分はかなりあると思うんですよね。

あと「ここぞ!」っていう勝負の一コマはクオリティーが段違いなんです。

通常のコマとの振れ幅がハンパないから一コマで魅せられちゃう。あれは鳥肌立ちます。新しいテクニックなのかもしれませんね。

ちなみに、画力はだんだん上がってて最新刊の絵とか、めちゃくちゃ良い感じです。

② ヒリヒリするような心理描写

この漫画の「キモ」でしょうね。

読み手の心までグイグイ揺さぶってきます。

登場人物が腹の底で何を考えているのか。これがおどろおどろしいんですよね・・・。だから面白いんですけど。

あらゆる立場の人間がいる中で、それぞれの人が何を思い、本当の意味で「どうなりたいか?」という心理を描いてます。

もう読んでて手に汗握りまくりです。

みーんな腹の中で何考えてるんだか・・・って思うけど、これこそ現実世界のリアルなのかもしれません。 

③ ストーリー構成

映画とかドラマを観てる感覚です。

すごーく映像化しやすい構成になってると思うんですよね。カット割とか。

サイドストーリーを効果的に差し込んできたり、時代が行ったり来たりしながらメインストーリーを際立たせてるところとかストーリー構成でグッと引き込まれます。

④ キャラクター

それぞれのキャラクターが・・・濃い!!

もう絶対忘れないぞオマエーーー!みたいなキャラクターばっかです。

だから登場人物もそれなりに多いんですけど「誰だっけ?」みたいなことにならないんです。それほどに強烈キャラが満載。

今、キャラクターの人気投票をやってるみたいなんですが、この相関図を見てるだけで楽しいという事実があります。

ホント素晴らしいキャラクターに溢れてますね〜。

⑤ リアリティ

夢と仕事。理想と現実。

この辺って、自分にも身に覚えがあることだったりするんです。

音楽をやってたころは「才能」とか「センス」っていう言葉に相当敏感でした。これがないとクリエイティブなことはできないと思ってたんです。

でも、本当はそれだけじゃない。

そうした「作品」を世に出すためには営業のチカラが圧倒的に重要だし、このへんを知らない作り手が多いってことも事実ですよね。

どんな業界でも起きてる問題をズバッと切り込んでるので、読んでて共感しっぱなしでした!

まとめ

いろいろ考えたくなる漫画です。

自分の仕事について考えたくなるのはもちろんですが、漫画の中で言い放たれたセリフが1日頭を離れない・・・なんてこともありました。

「仕事ってなんなの?」

みたいなことまで考えちゃう恐れもありますが、やっぱ自分はこういう作品が好きですね〜。

ということで、今日はここまで!

左ききのエレン(1): 横浜のバスキア

左ききのエレン(1): 横浜のバスキア